ポケットモンスタースカーレット・バイオレットは2022年11月Switch発売のポケットモンスターシリーズの完全新作。剣盾以来3年ぶりで今作はシリーズ初のオープンワールド方式ということで注目度も高かった作品。筆者はバイオレット版をプレイしたのでレビューしていきたい。
なお発売直後の作品であるためネタバレ及び今後のアップデート等で評価が変わる可能性があることは注意してほしい。
評価点
探索したくなるフィールド
近年のポケモンシリーズはマップが一本道であることが多く、かなり単純化されたいた。しかし今作はオープンワールドでポケモンの世界が広大に広がっておりいろいろなところに探索してみたくなる。
ポケモンの種類も序盤から新ポケモン、旧ポケモン問わず割と豊富でそこら中をうろうろしている(シンボルエンカウント)ので捕まえてみたくなる。フィールドも雪山、砂漠、海など変化球はないもののオーソドックスなものは代替あり、それぞれに特色あるポケモンがいるので冒険が楽しい。あちこちに落ちている道具もピーピーエイドなど今までは数に限りがあったレアな道具も落ちていてついつい拾いたくなってしまう。
また、今作はトレーナーと視線が合ってもバトルにならずこちらから話しかけねば勝負にはならないうえライドポケモンをパワーアップ(従来でいうところの秘伝技)がなければ進めない町はなく、チュートリアルさえ終わってしまえば序盤からかなり先の町まで行くことも可能。もちろん、ライドをパワーアップしてからいける場所もあるのでそう言ったところは後の楽しみとして戻ってくることもできる。
3つのシナリオはどれも◎
本作は3つのシナリオがある。従来通りジムバッジを集めチャンピオンを目指す「チャンピオンロード」、ヌシポケモンと戦う「レジェンドルート」、悪の組織スター団と戦う「スターダストストリート」である。どれもこれまでの作品であったものであるが、それを一つにまとめたという点では集大成的な側面がある。一応エンディングを見るためには3つすべてクリアすることが必要だが、1本道のルートではないのでどれからやるかは自由だし、ほったらかして探索に集中してもよいのだ。
オープンワールドで自由に冒険しようということを売りにしていたため全く期待していなかったが本作のシナリオは悪くない。作風自体は明るいが、当初から不穏な雰囲気をだし結構深刻な問題を抱えている登場人物や学校のなぞに少しずつ迫っていく感じはいい。とくに伝説のポケモンは戦闘では使えないがライドポケモンとして序盤で仲間になり、これまでとはかなり異なる見せ方だ。威厳もへったくれもないのはいつも通りだが、シナリオ中の活躍という点では歴代の中でも上位ではなかろうか。
戦闘のテンポがよくなった
戦闘時のメッセージが短縮されており、店舗がよくなった。例えば相手トレーナーを倒した後に賞金をもらったというメッセージはメッセージウィンドウに表示されず、画面右の方にちょろっと表示されるようになり、いちいちメッセージ送り必要がなくなった。
ターン制RPGは戦闘のテンポが悪いという批判はよくあることだと思うので細かい点ではあるがこうした努力は評価していきたい。
テラスタルレイドバトル
ポケモンが結晶化するというテラスタル(従来でいうところのダイマックスやZ技、メガシンカポジション)が本作で実装された。これはテラスタルすることで技の強化やポケモンのタイプを変えることもできるというものだが、御三家などデフォルトのポケモンはタイプが変化しないのでダイマックスと比べると派手さはないかもしれない、しかし大戦勢には無視できない要素であろうし、毎回変化を加えてくることはマンネリ防止にも良いだろう。
また、テラスタルポケモンと4人で戦うレイドバトル機能が追加された。
ダイマックスとの違いはライフ制から時間制になったことである。前作は味方が一回一回行動しテンポも悪かったが今作は味方がそれぞれ独立して裏で動くようになったためテンポよく進められる。助っ人NPCも前作はほとんど攻撃しないゴミもいたが、こちらは積極的に攻撃してくれるキャラが対艦的に増えた印象。もちろん相手ポケモンと相性が悪いNPCがきてしまうと足手まといになってしまうのは同じだが前作の反省を踏まえ大分マシになったと思う。
問題点
ロードが長く、動作重し
頻繁に入るわけではないがロードがちょっと長い印象。とくにシナリオでイベントを見ているときは画面の暗転にかなり時間がかかる場合がある。エンディングの前のとあるイベントは次の場面まで暗転してから10秒はかかったので思わずフリーズを疑ってしまった。
全体的に動作がもっさりとしている点も気になる。とくにたくさんのポケモンや人間が表示されるところではかなり動きがカクカクし、グラフィックの質も大幅に下落する。加えて、バトル中もバトルに加わっていない野生ポケモンは裏で動き続けるため戦闘終了後すぐに別のポケモンとエンカウントということもある。一定時間はエンカウントしない無敵時間が必要だと思う。
グラフィックを売りにしているシリーズではないのは承知しているがもうちょっと頑張ってほしかった。戦闘テンポはよくなっているだけにこうした点はもったいないだろう。
キャラクターデザインがダメ
キャラクターデザインは歴代の中でも間違いなく下から数えた方が早い作品。
まずポケモンについては前作でもそうであったが海外のカートゥーン調のキャラが多すぎて日本風のキャラクターが中心だった初期のころのポケモンと並ぶと尋常ではない違和感がある。数が多いのでどのキャラがダメかは一々指摘しないが(気になる人は画像検索してみてほしい)、ポケモンを知らない人に同じ作品のキャラクターですといってもおそらく信じてはくれまいと思う。
人間キャラも同様に海外のテイストが極めて強い。まず、ポリティカルコレクトネスに配慮し多様な人種や性別のキャラを出すことに注力しすぎでとくにモブトレーナーの質・量がともによくない。とくに「学生」というトレーナー種は年齢の違いもあるためかなり水増し感がある。というか明らかにおじいさん・おばあさんにしか見えない学生がいる。大学ならあり得なくはないが…。年寄りの学生がいないのは差別だ!という主張はさすがにやりすぎちゃう? 顔グラも近年海外ではわざとブサイクにしないと差別になるらしく今作のキャラクターも見た目微妙なキャラが多い。個人的に人種云々は別にいいと思うのでわざとブサイクにするのはやめてほしい。
フラゲ対策が甘いため事実上海外先行発売になっていることも踏まえて海外重視しすぎ感があり、今後ポケモンシリーズは日本語版が発売されなくなるのではないかと本気で心配になってくる。
レベル制限など自由な探索の阻害要因
ジムバッジを集めないと交換したポケモンが言うことを聞かないのは今まで同様だが、今作は野生ポケモンの捕獲と捕獲時のレベルでいうことをきくかどうかのレベル制限がかかっている。従来は場違いにレベルの高いポケモンとエンカウントするということがほぼなく問題はなかったが、オープンワールドで初めから強いポケモンを捕まえに行ける今作ではこの制限は深刻だ。捕獲自体は不可能ではないが一般ポケモンが伝説のポケモンと間違えるほど捕獲しにくくなる。またレベル制限もジムバッジ7個でレベル55と従来までの作品よりも制限が厳しい(作品によるが7個でレベル70前後が相場だったと思う)。なぜ自由を売りにしたのにこうした制限を強化したのかは理解に苦しむ。
また、ストーリーの進行順に敵のレベルが上がる等の措置がないため自由に攻略できるといっても後半のジムに序盤で挑んでもまるで歯が立たない。強いポケモンを捕まえることも前述したように難しいので多少前後することはできても攻略順はほぼ固定である。
アクションゲームではプレイヤーのテクニックでレベルや装備の質をごまかすことができてもいわゆるRPGではどうしてもレベルが低いと勝てない。このあたりは初めてということもあって調整不足だったか。
BGM
まさかこの点について不満が出るとは思わなかった。オープンワールドで場面を切り替えるタイミングが少ないからかBGMがどれも似通っていて薄味かつ押しが弱い。通常のフィールドや野生戦などはいまいち印象に残るものが多くない。とくに四天王戦は雰囲気はあっているがBGMそのものが極めて短く人によっては手抜きに思えるかもしれない。今作の四天王はそれほど大きな役割があるわけではないがもうちょっと頑張ってもよいのではないだろうか。
まとめ
初のオープンワールド作品ということで従来とは違った遊び方ができるのは間違いないが、それに伴い従来とは違った不満が出てしまうのも事実。まだまだ実験的な側面がある部分も否定できず、従来型とどちらが楽しいかは人によって意見が分かれそうだ。とはいえ初代もゲームとしてはバグが多い等の問題点があったシリーズである。少しずつ洗練されていくだろう。
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