ドラゴンクエストモンスターズ3 魔族の王子とエルフの旅は2023年12月1日にSwitchで発売されたゲーム。ドラゴンクエストモンスターズシリーズ(DQM)の完全新作であり、制作発表された2018年から主人公の変更など大幅な仕様変更を経て発売された。
かなり待たされた形であり、JOKERシリーズ以外の久しぶりのナンバリング、Switchでの発売とかなり期待は高かったと思われる作品だ。
評価点
配合等の基本的な面白さはそのまま
モンスターズシリーズと言えばモンスター2匹を掛け合わせ、より強いモンスターを生み出す配合システムが基本であり、本作でもこれは健在。
庭球のモンスターから歴代シリーズのラスボスまで生み出すことができるというのは通常のDQではまず見られないシステムであり、正直シリーズファンとしてはこれだけでも最低限の面白さは保証されると言ってもよい。その他のモンスター育成RPG同様、推しを生み出せたときの感触は最高の一言につきる。
本作では配合表も一新されたため今までとは違う組み合わせになっているものも多く、試行錯誤して発見していくのもありかもしれない。
イベントはフルボイス
イベントシーンはフルボイスである。今作は世界展開をしているため、海外への配慮で人間キャラクターのデザインがかなりアレになっているが、声優の演技は全く問題がない。とくにロザリーに関してはキャラデザで損している分を声で補えていると思う。本当にありがたいことである。
なお英語版のキャストもある模様。1週目を終わった人は2週目でリスニング教材にしてみるのも一興か。
IFのシナリオとしては悪くない
賛否が分かれそうなのはシナリオだ。本作はゲーム開始時点にありえたかもしれない世界と説明が入ることからDQ4のIFのシナリオとして展開される。個人的には主人公ピサロの過去がシナリオになっていると思っていたのでDQ4シナリオと並行して進んでいくのは驚かされた。
明らかに後付で考えたシナリオであるが、矛盾に関してはあらかじめIFのシナリオと断っていることを考慮すれば許せるレベルだと感じた(ピサロが少年姿のままなのは気になったが)。デスピサロ軍団が結成されていく過程やモンスターマスターを目指す理由なんかも分かりやすく良かった(JOKER1などではこのあたりに関してはほとんど触れられていなかった)し、中盤以降は結構盛り上がるシーンもある、体験版では表情の変化に乏しかったがイベントシーンでは感情が分かるように変化するところも多くこの点は杞憂だったかなという印象。
気になる点を挙げるならピサロが人間を滅ぼそうとする理由がチョイ弱いかなという点。幼少期に住んでいる村を焼かれる等、いい思いがないのは分かる。だが、友人のベネットやロザリーが強硬に反対しているし、ロザリーヒルには世話になった人間も多いにもかかわらず滅ぼそうとするのはピサロの見た目も相まって中二病を発症したとしか思えないw
不満点
登場モンスターが少ない
体験版から危惧していた不安が的中した形に。今作からはFランクの下に新たにGランクが設定され、従来のSSランクがXランクに改称された(SSはナチス親衛隊を想起させるため海外への配慮から変更したと考えられる)。それに伴い、既存のモンスターのランクも見直された。例えばグレイトドラゴンは従来はAランクであったがBランクに、レオパルドはSSランクからAランクに格下げされている。このこともあって低ランクのモンスターに関してはメジャーどころは比較的そろっていると思われる。
一方で問題なのは高ランクのモンスターが極めて少ない点だ。前述のとおり格下げの影響もあるためかつて高ランクだったモンスターを含めたとしても少ない。具体例を挙げると…
ガナサダイ、グラコス、デュラン、ジャミ、ゲモン、ホメロス以外の6軍王などの魔王軍幹部クラスをはじめとしたモンスターが未登場であるし、竜王以外の魔王は前座形態も存在しない。というかDQ4がモデルなのに裏ボスのエッグラ&チキーラも未登場。選出理由もよく分からない点が多く、たとえば上記でも挙げたガナサダイはギュメイ将軍はじめガナン3将はいるのに未登場である。とくにDQ5以降の作品はリストラが目立つ。
色違いがいるにもかかわらずなぜか登場できなかったモンスターもいる。例えば…
ソルジャーブルはいるのにゴンズはいない、サイレスはいるのにジャミラスはいない、ラーミアはいるのにレティス(DQMでは色違い)はいない等。ファンならわかると思うが、これらのモンスターは有名どころであり、マイナーなモンスターを例示しているわけでは決してない。色違いでもよいので実装してほしかったと思うのは私だけだろうか?
さらに壊滅的なのはDQの外伝作品に登場したモンスターたちだ。こちらも具体例を挙げると…
「DQM2」のドーク、「キャラバンハート」のマガルギ、ギスヴァーグ、「JOKER1」の神獣・ガルマッゾ、「JOKER2」のレオソード、オムドロレス、ヒヒュルデ、「テリワン3DS版」の魔戦士、「イルルカ3DS版」の4枠モンスター(聖竜ミラクレアなど)、JOKER3の神獣、ガルマザード、ダクジャガルマ、大魔王マデュラージャ等、これらのモンスターは”全て”今作に登場しない。DQMシリーズですらこのありさまなのでその他のDQ外伝登場モンスターがどうなっているかは言うまでもないだろう。意外だったのは「ダイの大冒険」初出のモンスターも登場しないこと。大魔王バーンはJOKER3でも登場していたし、去年までアニメもやっていたので驚いた。
そもそもの問題としてXランクはドラゴン系と???系しか存在しないうえになんと合計7体しかいない!歴代魔王の多くがSランクに格下げされたとはいえ、あまりにも少なすぎる。いろいろな作品のモンスターが登場するのがDQMシリーズの強みでもあると思うのでこの点は残念である。DLCで追加する気なのかもしれない。
ロードが長い
体験版でも気になっていたがロードが長い。厳密には1回1回のロードがめちゃくちゃ長いというわけではないが、読み込むタイミングが多い。エリア移動のたびにロードが挟まるが、モンスター収集や配合の関係上、エリア移動は頻繁にせざるを得ないのでかなりの時間がロードに持ってかれる。
フィールドにあるモンスターの卵からしか生まれないレアモンスターもおり、よりにもよってこいつらが上級モンスターの配合に必須になっている場合がある。これを目当てに卵探しをしていると確率の低さとロード時間の長さもあって下手すると休日が1日消し飛ぶ。
処理そのものも重く、ゲーム内で悪天候のときは結構カクカクする。このあたりはSwitchのスペックの問題もあるためこのゲームのせいにはできない部分もあるのだが。
有料DLCがしょぼい
有料DLCは仲間にしたことがあるモンスターと再び会える「追憶のモグダンジョン」。自動生成ダンジョンの「エビ師範の修練迷宮」、1時間ごとにアイテムがもらえる「時の無限ボックス」の3つ。「追憶のモグダンジョン」は育成において必須レベルだが、過去作の追憶系ダンジョンは無料であったことを考えるとはっきり言って高い。クオリティも一度ダンジョンからでないと出現モンスターをリセットできない等、使い勝手があまりよくなく、有料にするなら便利さが足りない。
新生配合の廃止等、育成システムや格差
従来の新生配合のように特性を入れ替えることができるシステムが廃止されたため、特性に恵まれなかったモンスターは対人戦で活躍させることがほぼ不可能である。加えてステータスの上限も決められているため、ほぼ完全な劣化版というモンスターも散見される。
また、ステータスの中でも管理が特に厳しいのはMPである。3枠以上のモンスターが廃止された本作は従来よりHP以外のステータスが軒並み下方修正されているが、特技の使用MPはステータスのデフレ以上には下がらなかったものが多く、最上級の特技は1~2回しか使えないモンスターも。経験値稼ぎに最適な光あふれる地もなくメタル系と戦う機会も希少なことも拍車をかけている。もっとも、ボスのHPがやや低く、この点は開発者もある程度想定できていたようには見えるが。
ゲームバランスそのものは少なくともシナリオ中に関してJOKER3よりよくなっただけに惜しい。
総評
体験版で恐れていたことがシナリオ以外はほぼそのままだったという印象で5年も待たせたこと、初のSwitch発売だったことから期待が大きすぎた感は否定できない。とはいえDLCの割高感とモンスターの少なさはさびしいものがある。
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