(レビュー)ポケットモンスターX・Y 感想

ポケットモンスターX・Yは2013年に発売された作品。ポケモンシリーズでは初の3DSでメガシンカはじめ新要素が目白押しだった。

評価…B(佳作)

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評価点

グラフィックが完全3Dになったこと

今までとは異なり3DSになったことでポケモンのグラフィックも3Dになった。出来も悪くなく、ポケモンらしさがよく出ていると思う。技ごとにモーションも何種類かあり図鑑で確認可能なのも○。

バトルの演出も同時にパワーアップしておりかなり臨場感がある一方でポケモンコロシアム等の据え置き作品ほどのもっさり感はないという塩梅に調整されている。3D化に伴うテンポの悪さはほとんどないと言っていいと思う。

人間キャラも通常はデフォルメだが一部のイベントではちゃんとした頭身で表示される。こちらの出来も褒められるレベル。

登場するポケモンが非常に多い

新規追加のポケモンは過去作よりも少ないが様々な地方のポケモンが登場することで旅パのカスタマイズ性が向上。この点は新規ポケモンしかいなかった前作の反省点だと思われる。本作で未登場のポケモンも過去作との通信で連れてくることができるので全ポケモン使用可能で安心(ただし年500円の課金が必要)。

ポケパルレやスパトレといったミニゲーム要素

ポケパルレは手持ちポケモンをなでたり、お菓子をあげたりできる。かわいらしいので結構はまる。ポケモンと仲良くなるとバトルでいい効果が発生するようになるので救済措置にもなっている。本作は簡単なのでパルレしなくても十分クリア可能なんだけどね。パルレのミニゲームも難易度が高いものがあり極めようと思うと結構苦労する。

スパトレはミニゲームをしながらポケモンを強化できる。育成の手間も省けるので一石二鳥。ただし育成の効率はそれほどよくないのでガチの廃人は別の方法を探した方がいいかも。

経験値や金の稼ぎが楽になった

前作は相手とのレベル差によって経験値が増減するクソ仕様により高レベルのポケモンを育成しにくかったが今作はその仕様が廃止された。加えてバトルシャトーという稼ぎ施設があるので経験値稼ぎは比較的容易。ジェントルマン等賞金の多いトレーナーばかりなのでお金も自然と溜まる。さらに施設を繰り返し利用していればジムリーダーとの再戦も可能になる点は良い。雑魚トレーナーと強いトレーナーを見た目で区別できないというデメリットもあるが便利な施設と言える。

がくしゅうそうちの仕様変更により全ポケモンに経験値が配分されるようになったことも育成にプラス。ヌルゲーが嫌ならがくしゅうそうちをオフにすることもできる。

レポート(セーブ)にかかる時間が大幅に減少

シリーズ全体でみてもかなり短い部類。4世代、5世代はかなり時間がかかったが本作はほぼ一瞬。セーブは何回もすることになるので時間短縮は非常にありがたい。

問題点

追加要素とそれに伴うインフレおよび格差の拡大

今作から新タイプとして「フェアリータイプ」が追加された。これは強すぎたドラゴンタイプの対策として生まれたのだろう。しかし「強いタイプを倒すためにより強いタイプを」といった方針がインフレに結びつくと考え付かなかったなら浅はかと言わざるを得ない。インフレ対策のためにより高額の紙幣を流通させるようなものである。弱点は攻撃向けではない毒、鋼というところから隙が少なく「ゲーフリがかんがえたさいきょうのタイプ」といった雰囲気がにじみでており理解に苦しむ。こおりタイプにドラゴン耐性を付与すれば十分であった。本作ではフェアリーポケモンの能力値が控えめだったので大きな悲劇は生まなかったのだが…。

メガシンカも問題であろう。持ち物が持てない代わりに伝説ポケモンクラスのスペックが手に入る驚愕のアイテムである。ごく一部には禁止級のスペックすら上回るポケモンもいる。ガルーラにいたっては制限付きだが2回行動という意味不明な仕様であり特性込みで考えたら不遇な禁止級が裸足で逃げ出すレベルである。もちろんそれほど強くないメガシンカポケモンもいるが、メガシンカはバトル中1回までという制限も加わってメガシンカポケモン内でも使われるポケモン、使われないポケモンが露骨で格差が生まれた。もちろんメガありのポケモンとなしのポケモンとの間の格差も出現。とくに5世代はメガシンカがタブンネのみでありゲーフリに嫌われていることが明白である。

私は対戦ガチ勢ではないが自分の好きなポケモンではなくゲーフリの愛人を使わなければまともに戦うことすらできないというのは対戦ゲームとしていかがなものかと思う。

シナリオ

前作のBWよりはマシでありプレイしている分には苦痛はほとんどない。ただシナリオの方向性が不鮮明という問題がある。隠す気すらないほど初代(赤・緑)要素であふれかえっているため、少年とポケモンの冒険という初代風味の味付けかと思いきやライバル・友達があらゆるところでからんでくるため冒険感が薄れている。同様にシナリオ重視しない路線かとみせかけAZや3000年前の戦争といったBWをほうふつとさせるような設定もある。
ゲーフリに良いシナリオライターがいないことは明らかなので重視路線を徹底しなかったことは評価できるのだが、いかんせん中途半端に感じる。AZのくだりは不要であろう。

あくまで個人的な推測にすぎないのだが本作は、もともとBW同様シナリオ重視路線を想定していたが、メガシンカやフェアリーといった目玉要素、グラフィックの3D化に忙しく路線変更がなされたのではなかろうか。
それにマイナーチェンジ版が発売されなかったことも加わりシリーズがこのような中途半端な状態になったのだろう。

ミアレシティの構造

マップが広いうえにカメラワークが複雑でどこに何があるのか理解するのに苦労する。何度も来る場所なのでなおさらイライラする。3D化によりこういった表現を見せつけたくなる気持ちは分かるがユーザーはどう思うのかを第一に考えてほしかった。

世界戦略と日本ユーザーの効用の低下

前作からその雰囲気はあったが本作からはこの傾向があからさまになった。
舞台はフランスというだけならともかく、ゲームコーナーは登場しない(海外のレーティング対策という説が有力)と日本人にとってはマイナス要素がある。

最悪なのは世界同時発売と海外における配信重視であろう。海外はフラゲの規制が緩いらしく、発売のはるかに前の段階でフラゲされるため世界同時発売とは名ばかりの事実上の海外先行発売である。フラゲした目立ちたがり屋な外人たちがその情報をネットに垂れ流すのでネタバレが嫌な人にとっては迷惑極まりない。また海外では日本に比べると伝説のポケモンの配信が多く、映画館に行かねばならない日本と違い無料である場合も多いらしい。日本ユーザーが相対的に損をしているのは明らかである。

まとめ

本作自体の出来は結構良い。ただ作品内の改革の必要性が疑問であり、要素間でかみ合っていないものが見受けられる。

ポケモンシリーズは近年シナリオ重視路線の作品が多い(本作はそうではない)がこれは世界戦略とは相性が悪い。海外ユーザーはシナリオを重視しないというのが通説だし、そもそもたくさんの国で発売するほど現地の文化や圧力団体等に配慮する必要からシナリオの表現の幅は狭くならざるを得ない。X・Yシリーズはマイナーチェンジ版が発売されず、イマイチ何がしたかったのかよくわからないシリーズになってしまった印象である。妖怪ウォッチの挑戦に対し後手に回っていたのがよくわかる。

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