真・女神転生5はSwitchで2021年に発売された。メガテンシリーズの最新作であり、多くのファンが発売を待っていた作品であろう。筆者はシリーズ初プレイであったが、歯ごたえある難易度と仲魔システムなど育成RPG好きにはなかなかおすすめできる作品だと思った。
評価点
一癖も二癖もある難易度と戦闘システム
筆者はシリーズ初プレイということもあり難易度はeasyでプレイしていたが、なかなかやりごたえがある。一回目をクリアするのに何回も死んだw(無料DLCでさらに難易度を下げられるらしいのでゲーム自体初めてという人はそちらの方が賢明かも?)
まずなんといってもこのゲーム、同じエリアでも敵のレベルが最初と最後では10、20くらい変わってくるのでレベル上げを怠ると普通に死ねる。技や仲魔(他のゲームでいうところの仲間モンスターに近い)、神意という主人公のみの特殊スキルなども結構計画的に習得していかないとジリ貧になる。一方で主人公のレベルは比較的上がりやすく、ゲームオーバーのペナルティは最終セーブに戻されるだけで所持金減額等の措置はない。ボスの前でもほぼすべて「これからボス出ますよ」的な警告を出してくれるし行先はマップ上で表示される。
戦闘システムは基本的にはターン制のコマンドである。「基本的に」としたのは本作は味方の行動次第で行動回数が増減するというシステム(プレターン制)が導入されているからである。これはクリティカルや弱点を突いた際に行動回数が増え、敵に攻撃を無効化されると回数が減るというシステムである。うまく弱点をつけるように技や仲魔を編成すれば「ずっと俺のターン!」で敵を殲滅することも可能でなかなか爽快であった(実際は最大でも8回行動が限界)。バフやデバフは有効に決まっても行動回数を増やすことができないのでここら辺の取捨選択も駆け引きになる。もちろんこのシステムは相手側も使ってくるため弱点を突かれると一瞬で形勢逆転することもあり、よほどレベルに差がなければ気が抜けない。
仲魔システム
このシリーズはモンスター育成RPGとしては先駆け的存在であり、シリーズ未プレイながら筆者はシステム自体は認知していた。教科書的にも大変重要なシリーズといえる。
今作でもモンスターは仲魔として味方に引き入れることができる。弱らせて捕まえるというのではなく会話で交渉して仲間にするというのが特徴である。といっても簡単に仲間になるわけではなく、選択肢を間違えると攻撃されるし、成功しても金品を要求される場合がほとんどだ。悪魔というだけあってなかなか世知辛いものであるが、見た目や性格からどの選択肢を選べばいいか考えるのはなかなか楽しい。
仲魔にした悪魔は悪魔合体というシステムを使うことで新しい仲間を生み出すことも可能。というかこれをつかわないのは縛りプレイになるレベルで必須のシステム。どの悪魔を生み出すことができるかは逆引きで検索できるため非常にわかりやすく目当ての悪魔を生み出しやすい。
ある程度育成の自由度があるのもいい。仲魔はレベルが上がりにくく、現地調達で仲間にしたものやスタメン落ちした悪魔を素材に新しい悪魔を生み出すのが基本である。その点では「仲間モンスターを強くする」よりも「強いモンスターを仲間にする」ことに焦点が当たっているといえる。しかしドーピングアイテムやレベル上げアイテムは手に入りやすく、別の悪魔から技を移植することもできるため愛があれば序盤の悪魔でもクリアはできるだろう。モンスター育成RPG的なゲームではクリアのために渋々好きでもないモンスターを使うということは往々にして起こることであり、この点で非常にバランスが取れているといえる。
キャラデザ&グラフィックがいい
キャラデザは文句なし。悪魔も現実の神話や伝説に登場する悪魔から引っ張ってきたものがほとんどであり極めて多様。かなりグロテスクな悪魔もいれば小動物的な悪魔、かっこいい悪魔、オタク受けしそうなかわいらしい悪魔といった具合である。モンスター育成RPGは近年ソシャゲに食われがちでコンシューマでは貴重になってしまったためこのジャンル好きにはありがたい。特定条件下で悪魔同士の会話が起こることもあり、コミカルで面白いものもみられる。
グラフィックはSwitchのなかでは割といい方だと思う。前述のとおりモンスターは結構リアルな造形のものが多いので路線的にもグラフィックは良いに越したことはない。
問題点
マップは改善の余地あり
マップは広いが、かなり見づらい。マップを歩き回って先に進んでいく必要があるが3Dの弊害か接続、とくに上下が非常にわかりにくいのである。目の前に行きたいところが見えているのに段差や穴があって遠回りしなければならず、その遠回りの道順も分かりにくいのでどこにいってよいか道に迷うことになる。先に進むべき場所はマップ上に記されても遠回りの道順までは表示されない。一応回復アイテムがマリオシリーズのコインのように配置されていて誘導になっていることもあるが焼け石に水感がぬぐえない場面も。
マップは実際の東京がベースになっているが東京感が感じられないのも気になる。廃墟という設定があるためしょうがない部分もあるが「あっ、ここ東京だな」と思えるスポットが各フィールドで一か所くらいしかなく、実際の土地を使う意義が薄い。あまり東京感を出しすぎても関東圏以外の人に疎外感を与えかねないがもうちょい東京っぽくしてもよかったと思う。
シナリオ
詳しいことはネタバレになるため省くが基本的には終盤にどの陣営につくか選択が迫られる。しかし登場人物の描写ががかなりあっさりしていてイマイチなため感情移入が難しい。とくに八雲という人物はぽっと出感がぬぐえない割に重要人物なのでもっとキャラクターの深堀をしてもよかったのではないか。
シナリオの中身に関して筆者は神話や悪魔について詳しくないためその点からの考察は別の人に任せたいが、多様性が叫ばれる一方で民主主義が揺らぎ専制政治の影が迫りつつある現代の日本人にはなかなか示唆するところが多いシナリオに思われる(開発期間が長かったようなので昨今のコロナ禍を踏まえて練ったシナリオではないだろうが)。だからこそキャラクターの描写はもう少し力を入れてほしかったところだ。
周回プレイへの配慮
マルチエンディングであり、セーブデータを引き継いで最初から始められる、いわゆる「強くてニューゲーム」が搭載されている。
ただ周回プレイにあたってイベントスキップやメッセージの早送りが遅いところは気がかりだ。とくにイベントスキップはユーザーから見れば1つのイベントに見えるところも内部処理では複数になっているのか何回もイベントスキップしないと飛ばないところが多い。くわえてマルチエンディングなので仕方ない部分もあるが、選択肢が挟まるとスキップが中断される。ボス戦の演出も一部飛ばせない部分があり何回も周回していると「はよしてくれ」となる。
また、選択肢を間違えるとそのエンディングにおける周回特典の特殊能力や仲魔モンスターが登場しなくなるという特大の罠がある。これに気が付かずにセーブしてしまうとエンディングこそみられるがそれらの要素を収集するためには最初からやり直しである。特定ルートに入るために必然性が高い選択肢を選ぶことが重要だが、主人公の最終決断自体はどの選択肢を選んでも排除されない。例えばAルートが内部処理では最も妥当な選択であったとしても最終決断ではBルートに入ることができてしまう。初見ではどのルートに親和性があるのかが分かりにくく失敗しやすい。選択肢でどのルートに入りやすくなるか表示するとかそもそも必然性が足りないルートには警告するとかしてほしかった。
まとめ
古き良き難易度のターン制RPGに現代的なグラやシステムが追加された遊びやすいゲーム。不満点もないわけではないが、初心者から上級者まで遊びやすいゲームであると思うし、モンスター育成という昨今珍しくなりつつあるジャンルである。気になる点があればプレイをお勧めしたい。
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